1200m登って、八合目を目指す (富士登山競走編を最初から読む方はこちら) 五合目の給水所では水とショッツを飲む。 急いでかぶり水をしたらシューズがずぶ濡れに。 マジか! ここでウエストポーチに入れてた空のペットボトルに水を入れる予定だったが、上のほうは曇ってて水を持たなくてもなんとかなりそうなのでやめる。時間節約。 アームカバーをここで装着する予定だった。 しかし時間に追われていて、ど忘れ。 冷却タオルを首に巻く計画も、ど忘れ。 時間に余裕が無いと、こういうやるべきことを忘れる。 給水所を出たところで、テレビの撮影クルーに話しかけられるが、何て言われたのかまったく聞き取れない。 「おっす!」 と適当に叫んで、石段を登りシングルトラックに入る。 ここは毎年恒例の渋滞エリア。これは仕方ない。 去年より到着が遅い分、渋滞も長い。 なかなか進まず気が急くが、この渋滞を抜けた先からは、ほぼノンストップになるので最後の休憩だと思って、馬返しから五合目までハイペースで来た足を休ませる。 大会案内に「五合目を2時間15~20分で通過して完走できた人は数人しかいない」と書いてあった。 ※正確には完走16人/未完走300人以上。確率5%以下 たぶんその完走者も2時間15~16分位の人なんだろう。 私のような「2時間18分30秒」では、完走は絶望的だ。 去年より五合目の到着が遅い分だけ、 この先の渋滞もひどくなっているだろうし。 しかし、そんなデータはどうでもいい。 もう、ありったけの力で登るだけだ。 一時は中ノ茶屋でリタイアするつもりだったのに 五合目のウォール・マリアを突破できたのだ。 こうなったら八合目のウォール・ローゼも突破したい。 普通に考えれば簡単にわかる。 このすげー大会を お相撲さんでは突破できねぇってことくらい。 それでも、一歩、また一歩と進むんだ。 たとえ完走できなかったとしても その一歩は、自分にとって大きな進撃になる。 走る事をやめたとき、そこで初めて敗北となるのだ。 進み続ける限りは負けではない。 もう、人間性をも捨て去ることができなければ、 「五合目2時間15分以降の人はまず完走できない」 という常識を覆すことはできないだろう。 獣化したまま、進撃するのだ。 獣の力士で。 さあ、行くぞ! 注)「進撃の巨人」風の言い回しが随所にでてきます。未読の方にはさっぱり意味不明だと思いますが、そんな方はこんなブログを読んでないで、書店に Let's Go ! 後半戦スタート! 渋滞を抜けて、砂礫の登りが始まる。 左手でスタッフがアミノバイタルのゼリーを 配布していることに気づく。 こんなところで配ってるとは! サプライズだ。感激! このときふと思ったが、ランナー向けのジェル・サプリメント・食べ物を製造してるメーカーさんは、 「レース中のキツそうな場所でサプライズ配布」 というのをマーケティング戦略としてやってほしい。 顧客のブランドロイヤルティが、ぐぐっと向上する。 間違いない。 今回のようなキツいシーンであれば、ぶっちゃけ何を飲んでも効いた気がするし、おいしく感じる。 TVCMとか、SNSマーケティングとか、そんなところで情報を拡散しても、認知はされても刺さらない。 せいぜいお試しで1回買ってもらって終わりだ。 それより顧客にぶっ刺さるシーンで配布するのが一番。 例えば、ガリガリ君の赤城乳業さんとかね、 7月のおんたけウルトラあたりでぜひお願いしたい。 OSJのような水とジェルしかないクオリティのレースで 85kmあたりで配布したら選手から大感謝されるだろう。 「ガリガリ君に抱かれてもいい! 」 という人が急増するはずだ。 配布する場所も、スタート前・エイド・ゴール後などの、ありきたりな場所ではダメだ。 「こんなところでっ!?」 という場所で配っていただきたい。 サプライズ感は大事。 例えばUTMFなら、長者ヶ岳や杓子山頂あたりだ。 杓子山頂だと、選手によっては2晩目のナイトランで意識が朦朧としてて、しかも気温0度というときに、 「ガリガリ君どうぞっ!」 ということになるかもしれない。 しかし、その頃はどの選手も幻覚を見てるので、 「あぁ、幻覚か・・」 とスルーしてもらえるはず。大事には至らないだろう。 心配無用だ。 今年も五合目からはガスってて涼しい。 これは助かる。 カンカン照りだったら、間違いなく即死亡だ。 去年同様、地面が踏み固められてる所を選んで進む。 砂礫で足が沈むと、それだけ負担が大きくなるからだ。 馬返しから飛ばしたせいで、足の疲労度が大きい。 だが関門まで余裕がないので止まる訳にはいかない。 左側で女子4人組が食べ物を持って応援している。 梅干しをいただく。まんじゅうも配ってた。神! 1人、また1人と抜いていく。 決して私が速いわけではない。 どんどん脱落者がでてくるのだ。 立ち止まって休んでいる人 攣っている人 酸素不足で息が上がっている人 心が折れた人 そう、このレースの本当の勝負はここからなのだ。 壁のある場所は積極的に触って、腕の力も使って進む。 うしろから衣装をガサガサいわせながら登って行くと、 「えっ?」 「マジか!?」 「登ってきたんスか!!」 「五合目、間に合ったの??」 他のランナーから、驚異の眼差しで見られる。 おそらく周囲にいたランナーのほとんどは、馬返しまでの区間でしょぼんと歩いてた力士を抜いてきたはず。 それがここにきて、恐ろしい顔をしながら荒い息遣いで、うしろからズンズンと進撃してきたのだ。 驚くのも無理はない。 ある人に至っては、 「ひぃいい!!」 と、恐ろしい幻覚でも見たかのような反応をしていた。 (いや、いくらなんでも、そこまで驚かなくても...) と思ったが、こんなところに獣の力士がやって来るとは思いもしなかっただろう。驚かせてしまい申し訳ない。 山小屋手前の階段は狭いので大行列... 7合目給水所(花小屋)に2時間59分で到着 ワンカップ大関の瓶で水分補給! 蒸かした芋を食べたいところだが、あるわけない。 左側の下界は雲海! 岩場ゾーンに突入する。 グローブを持っていたが、つけるのを忘れる。 まあ、獣には関係ない。 手を怪我する恐れはあるが、素手のほうが登りやすい。 私が五合目以降で最も重要と思っている地点はここだ。 人のいない岩場を高速でよじ登っていけるか否かが、 制限時間ギリギリのランナーの生死を分ける。 前の選手の後ろについて登っていたら、まずアウトだ。 顔も体も岩スレスレを這うような感じで岩をよじ登る。 岩にしがみつく感じ。とにかく重心低く。 バスケなら、ステイ・ロー。 動物なら、コモドオオトカゲ。 進撃の巨人なら 「分隊長!ワイルドすぎます!」っていうハンジ。 そんなイメージで。 途中、岩に足をぶつけた反動で足が攣りそうになる。 (あぶねぇ…!) 攣って進めなくなったら、ゲームオーバーだ。 岩にぶつかったとしても転んでる場合ではない。 むしろ、ぶつかった岩を木っ端微塵に粉砕するくらいの勢いで登らないと、関門に間に合わないのだ。 スラムダンクの山王戦で、魚住が赤木に 「お前は鰈だ。泥にまみれろよ」 と言ったシーンを頭に浮かべ、鬼の形相でよじ登る。 這って進んでいると、ここで想定外の事態に気づく。 おすもーさんの衣装のお腹部分はレース後半になるにつれてしぼんで小さくなるようになっているのだが、、、 なんかすんごい膨らんでるぞ…? 気圧が下がったからか! 山の上でポテチの袋がパンパンになるのと同じだ。 ここにきて超大型力士になってしまった! まずい。 立って歩いてる分にはいいけど、 地面を四足歩行で這って進んでいる時は、腹が邪魔。 イチイチ地面に当たって擦れる。 もうっ!!! 給水所(太子館)を3時間30分で通過。 子供達もお手伝い。ごっつあんです! まだまだ先は長い。 (そうだ… このレースは残酷なんだ...) と再認識。 関門時刻まで、残りあと30分。 サシャのような強烈な放屁をして気合を入れ、 給水所をあとにする。 疲れているので、 惰性で上っているとピッチが自然と遅くなってしまう。 なので、ピッチを元に戻すために 「 ピッチピッチ、チャップチャップ、ランランラン ♪ 」 と野太い声で繰返し唱え、一定のピッチをキープする。 八合目が近づきつつあるのは確かだが、上は見ない。 そもそも、どこが関門の山小屋なのか覚えてないし、 違う小屋を八合目関門と誤認して、 「あそこまで頑張ろう!」 なんて期待すると、間違ってたことに気づいたとき、 「騙された...」 と、(勝手に期待しただけなのに)ひどく落胆する。 上を見て、いいことなど何もない。 レース中は不確かなことに期待しないほうがいい。 その期待が裏切られた時のダメージがでかいことを 過去の経験からよく知っている。 とにかく関門までの残り時間だけに意識を集中する。 あと20分。 時間は絶対に嘘をつかない。 20分後に、いずれかの結果がでる。 関門に間に合えばレースは続くし、ダメなら終了だ。 先を焦ってストライドを広げて左足を踏み出した際、 足を乗せた岩がぐらついて、左膝を軽くひねる。 大事には至らなかったが、 テーピングしてなかったらヤバかったかもしれない。 危なかった… もっと集中しないと! お腹がやや痛いので、ウエストポーチをゆるめる。 きついと腹が痛くなるし、緩いとズレて気になる。 ウエストポーチはあまり使いたくないアイテムだ。 給水所(白雲荘)に3時間44分で到着。 干し肉を食べたいところだが、あるわけない。 「あと200mで本八合目ですよ~」 と教えてもらう。 泣いても笑っても、あと15分。 八合目を通過したあとに飲む予定だった、 最後のショッツをここで摂取。 関門に間に合わなかったら、残していても意味がない。 ここでエネルギーを入れ、あと15分突っ込むしかない。 しかし、ここから想定外の事態に。 足が止まったランナーが大量発生していた。 道が狭いので、立ち止まったランナーは渋滞の元。 急いでいる身からすると、はっきり言って邪魔だ。 力士的には"浴びせ倒し"て、前進したいところ。 しかしここは土俵ではないので、ぐっと我慢する。 まあ、諦めたくない心境は誰よりもよくわかるしね... 右手にいた、海外観光客のグループが 「 SUMO ! 」 と写真を撮りながら声をかけてくる。 日本で見るべきモノのトップスリーといえば、 FUJIYAMA , GEISYA , SUMO だ。 そのうちの2つを同時に見れるなんてラッキーだね! ・・なんていう英語がペラペラ出てくるわけもなく、 「Oh!YEAH!」 と咆哮して立ち去る。 富士山ホテル別館を通過。道はギュウギュウ詰め。 八合目の関門だ! 着いたっ! ここに来るまで、 おじさんのスピーカーの声に気がつかなかった。 去年はかなり手前から聞こえてたんだけど、 今年はそれだけ自分に集中してたのかもしれない。 青い計測マットが見当たらない。間に合ったのか…? 「八合目通過! あとちょっとだよ!」
おじさんが関門通過したことを教えてくれた。 時計を見ると、3時間59分15秒。薄氷の通過! 「(頂上まで)上がってよ~」 という応援を背に受けて、最後の闘いに挑む。 |
by おすもーさん
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