現在地はココ。残り約35km。朝6時が制限時間。 (クレージーラン編を最初から読む方はこちら) ふと目を覚ますと、そこは暗闇だった。 何かに座っている。 (ここは… どこだ…?) 立ち上がり、かすかに光が漏れているほうへ手を伸ばすとドアが開いた。 暗がりに目が慣れてきて、 自分のいる場所がトイレだと気づく。 出口から外に出ると、ザーッと波の音が聞こえる。 海のすぐ近くだった。 ブランコやシーソーがある。公園だ。 公園のトイレの便座に座って寝ていたのだ。 起きているのに、現実感がない。 夢の中か、仮想世界にいるような気分。 なぜここにいるのか思い出せない。 なんでこんなところにいるんだ…? 思考が回らず、記憶がつながらない。 現在の状況が全然わからない。 腕時計を見ると、1時頃だった。 なぜ深夜にこんなところにいるんだ? 家で寝てる時間のはず。 なんで? …。 ……。 !!! そうだ! オレはレースしてたんだ! 走らなきゃ! トイレで寝てる場合じゃない! 少しずつ、記憶がつながり始める。 バス停のベンチで寝て、起きてからも、 ほとんど寝ながら走ったのを思い出す。 どうやら、そのまま意識を失ってしまい、 公園のトイレにたどり着いて寝てしまったようだ。 酔いつぶれて意識を失ったまま飲み続けると一緒。 意識を失ったまま走り続けていたのだ。 その間の記憶はない。 進まなきゃ。 レース中なんだから。 現在地をスマホで確認する。 するとこんな画面が表示された。 奥武島。 島…? えっ、沖縄にいるんじゃないの? 沖縄と違う島に来ちゃったのか!? ピンチインして、縮尺を変えてみる。 すると、奥武島の場所が判明。 どこに来ちゃってんのーー!! まっすぐ進めばいいところをなぜか左折して、 橋を渡って、違う島に来てしまった! どうしてこんなことに… 波の音に誘われて、 ふらふらと海に近づいてしまったのだろうか。 いや、そんなことはどうでもいい。 とにかくここを出発せねば。 慌てて出発したせいで、トイレに携帯とアームバンドと頭に巻いてたナノタオルを忘れたことに、レース後に気づいた… ※後日、現地の方が携帯を発見してくれて手元に戻りました。ありがとうございました!! ゴールまであと約30km Google Mapを見ながら進む。
奥武島を脱出し、元のコースへ復帰。 裏道のようなところを走っていたら、 犬に猛烈に吠えられた。 こんな深夜に走ってたら、完全に不審者だよね。 わんこが正しい。 寝たからか、足はよく動く。 膝裏の違和感はあるけど、あと30kmなら大丈夫。 約3km走って、 285.3kmファミリーマート具志頭向陽高校前店に到着。 ひさびさのコンビニ。 さっきトイレで寝てたのに、 便意を催し、トイレに入る。 で、便座に座ったら、気づくと寝ていた… zzz 10分くらいで目を覚まし、 缶コーヒーを買って、出発。 トイレで寝たはずなのに、猛烈に眠い。 もうこれ以上、仮眠をしても 眠気が解消されることはないような気がする。 歩き続けよう… しかし、だらだらと歩いていると、 歩きながら寝てしまいそうになる。 まずい。 もはやコーヒーなどの小手先の対策で なんとかなるような眠気ではない。 どうするか… 思考力が落ちている頭で必死に考え、 一つのアイデアを思いつく。 「速く走ることで、強い着地衝撃をくらう」 もうすぐ300kmになろうとしているので、 大腿四頭筋の筋肉痛は恐ろしいことになっている。 それなのに速く走れば、当然太ももには激痛が走る。 痛みを活用するのだ。そうすれば眠らない。 これしかない。 そして、意を決してキロ6分くらいのペースで走り出す。 痛え!!! でもこれを耐えて走るんだ。 これしか眠らないで進む方法はない。 こんなペースで長く走り続けられるわけもなく、 足の痛みに耐えられなくなったら立ち止まって休憩。 そして、再びキロ6分で走り出す。 これをひたすら繰り返していく。 どう考えても非効率な進み方だが、 今はこれしかない。 足のことよりも、 意識を失わないようにするほうが大事なのだ。 295kmのファミリーマート糸満米須店に到着。 ちょっとお腹が空いているが、 食べると眠くなりそうなのでやめる。 ブラックガムと眠眠打破を購入し、走り出す。 先ほどのストップ・アンド・ゴー作戦で走っていると 幻覚が見え始める。 幻覚が見えても、 それが幻覚だと認識できていれば問題はない。 そのまま走り続ける。 そして幻覚を見ながら30分ほど走っていると、 突如、視界全体が歪み始める。 (こ、これは…!?) 目をあけていても視界がぐにゃぐにゃ曲がり、 焦点が定まらない。 幻覚がレベルアップすると、こうなるのか…! (以降、「スーパー幻覚」と表記) 歩道を認識できないので、これでは走れない。 歩くしかない。 しかし歩いていると、寝てしまいそうになる。 頻繁に顔を引っ叩き、寝ないようにしながら とろとろと歩いていく。 しんどい。。 302.8kmのファミマに到着。 着くなり、トイレに入る。 便座に座ると、そのまま寝てしまった… zzz 目が覚める。 眠いが、焦点は定まるようになった。 今のうちに走るしかない。 缶コーヒーを買って一気飲みして、コンビニを出発。 焦点が定まっているうちにスピードを上げて走る。 今は足がどうとか言ってる場合ではない。 とにかくスーパー幻覚になる前に 次のコンビニに着くのだ。 必死に腕を振り、走る。 おそらくキロ5分台で走ってたのではないか。 こんな終盤に信じられない。 なりふり構わない激走の結果、 スーパー幻覚になる前に、307.7kmのファミマに到着。 着くなりトイレに入り、 糸の切れた人形のように眠りに落ちる。 zzz 何分寝たのかわからないが、目が覚める。 焦点は定まっている。 今のうちに走るしかない。 缶コーヒーを買って一気飲みして、コンビニを出発。 歯を食いしばって、再びキロ5分台で走り出す。 とにかくスーパー幻覚になる前に 次のコンビニに着くしかないのだ。 必死に腕を振り、走る。 眠気で脳が機能していないので、 足の痛みを現実ほど感じていなかったような気がする。 313kmのファミマに到着。 ゴールはすぐそこなんだからゴールすればいいんだけど、眠気に耐えきれずコンビニに駆け込む。 そしてそのままトイレに直行して意識を失う… zz zzz トン、トン、トン ドアのノック音で目が覚める。 トイレを待っている人がいることに気づき 慌ててトイレを出る。 なんか頭がすっきりしている。 アラームもかけずに寝ていたので、 どれだけ寝ていたのかわからない。 (今、何時だ…?) 時計を確認すると、、、 5:45。 5:45!? 制限時刻は6時なのだ。時間がない!! 慌ててコンビニを飛び出し、走り出す。 長時間寝たおかげで幻覚がない。 足も動く。 これで間に合わなかったらシャレにならない! 急げーーー!!! 猛烈なペースで走っていると、 前に2人のランナーと、先導するスタッフを発見。 よし! 一気に差を詰めて、追いついたところで、 沖縄国際ユースホステルに到着。 そして、スタッフや完走者達の待つゴールへ。 待っていてくれた方々とハイタッチしてゴール! 沖縄を自分の足で1周した! 去年のリベンジ達成ーーー!!! 控室のような所でビールを飲んだあと、 預けていた荷物を引き取って、お風呂へ。 314km走った足を見てみると、 足のむくみが過去最高レベル! 風呂を出て、着替えて、荷物を整理する。 何をするにも行動がのろく、時間がかかる。 帰り支度ができてから、1Fのロビーにおりて、 ランナー達が談笑している場所へ。 「深夜からコースで見なかったけど、どこいたの?」 と聞かれる。 まあ、見つかるわけないよね。 奥武島へ寄り道したり、 コンビニのトイレで寝てたんだから… 私設エイドの残り物がテーブルに散らばってるので、 ゼリーやみたらし団子、カップラーメンを食べる。 で、いつのまにやらソファでうたた寝… zzz 目が覚めて、時刻を確認すると9:30。 9:30!? 今日の帰りの便は10:35発。 1時間しかない!!! 慌てて宿を出て、最寄りの旭橋駅までダッシュ。 314km走ったあとなのにーー!! モノレールの車内で、スマホでWEBチェックインし、 9:50に空港に到着。 ダッシュで移動バスに乗り込み、LCCターミナルへ。 まだ搭乗は始まっていなかった。 間に合ったー! 無事に機内に乗り込んで、東京へと戻った。 とにかく凄まじいレースだった。 わかってはいたけど、すさまじかった。 「走りながら意識を失う」 「スーパー幻覚」 この2つはヤバすぎた。 2回目の夜もふらふらだったけど、 3回目ともなると、こんなことになってしまうんだな… 身をもって学習した。 このレース、来年は「サバイバルラン」と名前を変えて、美ら海水族館のほうも走る、完全な沖縄1周レースとしてさらにグレードアップするそうだ。 だけど、もう十分。 「完走して卒業!」と思いながら走っていたので、 達成できてすっきりした。 思い残すことはない。 最後に、この沖縄1周レースに今後出場される方へ アドバイスをひとつ書いておこう。 それは宿で寝ること。 強くオススメする。 どっちみち一度も寝ずに完走することは不可能だ。 道端で質の低い睡眠を繰り返すくらいなら、 宿でぐっすり寝たほうがいい。 民宿だと門限があって深夜に出発できないと思うので 18~22時あたりに宿に滞在するといいだろう。 計算通りに宿に着けるかどうかは、脚力によるけど… 寝るタイミングとしては2回目の夜がいい。 沖縄北東部を南下している頃。 楽天トラベルなどのWEBサイトで予約できる宿はないが 沖縄北部にも宿はある。少なくとも高江にはあった。 現地の観光協会などに電話して 宿を紹介してもらうといいと思う。 レース距離が長すぎると、どうしても中盤にダレる。 しかし、寝る場所を決めていれば、 「宿まで頑張って走ろう!」 と思える。こういうのは大事。 3時間くらい寝れば、足もそれなりに回復するので、 寝ていた時間くらいは取り戻せる。 もしそれで制限時間に間に合わないとしたら、 それは寝たからではなくて、脚力がないからだ。 そう割り切ればいい。 それと、寝るほうが楽しくレースを続けられると思う。 何度も短い仮眠を繰り返しながら、 眠気をこらえて進むのは、とにかくしんどい。 あれはまさに地獄だった… 私がレース前に検討した休憩スポットを3つご紹介。 ・かぐや姫(180km地点) ・ネイチャーみらい館(225km地点) ・ユインチホテル南城 猿人の湯(267km地点) 今回、なんとか沖縄1周できたのは、スタッフ・ボランティアの方に何度も叱咤激励してもらったおかげ。 それとレースリタイア後に私設エイドに回ってくれた選手達にもホントに助けられた。 感謝! ありがとうございました!!! < 戻る |
by おすもーさん
<海外レース>
Madeira(マデイラ) 4K Endurance Trail(逆トルデジアン) Andorra(アンドラ) HK168(香港) Spartathlon(スパルタスロン) UTMB 2015 Trans Gran Canaria Grand Raid Reunion Mt. Kinabalu Climbathon UTMB 2014 The Sahara Race(4deserts) <国内トレイル・Long> 上州武尊山スカイビュー 信越五岳 Ultra Trail Mt.FUJI(UTMF) OSJおんたけウルトラ <国内トレイル・Short> 立山登山マラニック 富士登山競走(山頂)2017 房総丘陵・養老渓谷 2017 鋸山ラウンド 八重山トレイル OSJ奥久慈トレイル 富士登山競走(山頂)2015 TJARトレーニングキャンプ 富士登山競走(山頂)2014 NASUロング スパトレイル 外秩父トレイル 神流マウンテンラン 美ヶ原 2013 富士登山競走(5合目) 伊豆トレイルジャーニー 鋸山 2012 玉川トレイル in しずおか 武尊山スカイビュー50k 美ヶ原 2012 RUN & BIKE in NOZAWA TOKYO成木の森 青梅高水山 スノーシューレース in 水上 房総丘陵トレイル スノーシューレース in 妙高 おんじゅくトレイルラン 高尾山天狗トレイル 長瀞アルプス <国内ロード・Long> 萩往還マラニック(250km) さくら道国際ネイチャー クレージーラン(沖縄一周) 萩往還マラニック(140km) T.O.F.R.(沖縄一周) <国内ロード・Middle> いわて銀河ウルトラ 奥熊野いだ天ウルトラ NAGOURAマラソン 隠岐の島ウルトラ くびき野ウルトラ 飛騨高山ウルトラ 能登半島すずウルトラ 秩父札所めぐりウルトラ 野辺山ウルトラ 2013 富士五湖(112km) 2013 伊豆大島ウルトラ 丹後ウルトラ 野辺山ウルトラ 2012 富士五湖(112km) 2012 <国内ロード・Short> 館山若潮マラソン 2017 佐倉朝日健康マラソン 伊豆大島一周マラソン 2015 伊豆大島一周マラソン 2014 谷川真理ハーフ 2014 谷川真理ハーフ 2013 富士山マラソン 谷川真理ハーフ 2012 多摩川チャレンジ <トライアスロン> バラモンキング(Long) 館山わかしお(Short) 横浜シーサイド(Sprint) Archives
11月 2017
|