5合目の佐藤小屋を目指す (富士登山競走編を最初から読む方はこちら) 馬返しの給水所では、 かぶり水をしてから、水とアクエリアスを大量に飲む。 あと、ショッツを1つ消化。 レモンとバナナがあったのに、なぜか食べなかった。 給水所出発地点の時計を見ると、1時間17分。 完走ペースには程遠いタイム。 去年よりもかなり遅い。 ただ、この時間を見た時は、 「盛大に歩いた割には、それほど遅くないな…」 と思っていた。 ひょっとしたら5合目も間に合うんじゃないかと。 ポジティブな勘違い。 馬返しを出て、鳥居をくぐる 去年よりも渋滞がひどい。 まあ、周りにいるランナーは馬返しまで散歩してきた力士と同じタイムなんだから、スピードが遅いのも無理はない。 みんなへばってる。 道幅が狭くて抜けないエリアが多い。 (やっぱり五合目の関門は間に合わないな。 まぁいいか。どうせリタイアするんだし) そんなことを考えながら、 割と気楽なテンションで進んでいく。 たまにこういう平地があり、 そこだけは周りにつられて走る。 すると、体が軽くなっていることに気づく。 ・・あれ? さっきまでのだるさが、なくなってる…? 馬返しまで散歩し、そこからも歩き続けたおかげで、 オーバーヒート状態だった体が回復したのかも。 (それなら… ちょっとペースをあげるか!) 歩きまくってきたおかげで、脚はまだ余裕ある。 渋滞してるけど全く抜けないというわけではない。 よし、やってみよう! 衣装の足の裾を膝上までまくりあげて手でつかむ。 低重心にし、段差は積極的に手をついて四足歩行で。 汚れようがワイルドだろうが関係ない。 とにかく前へ、速く。 こうなったら視界に入るランナーを 片っ端からブチ抜こう。 美ジョガーだろうが、ジジイだろうが、美ジョガー好きのジジイだろうが、誰であろうとブッコ抜くのだ。 ぬおぉ! 全員歩いているようなこのような道でも、 サイドからブチ抜いていく。 皆が黙々と進んでいく中、 「うりゃー」 「おりゃー」 と咆哮し、ストロングスタイルでゴリゴリ抜いていく。 頭の中にあるのは、 (前へ―――) ただそれだけ。 それ以外の余計なことは、頭から一切消え去る。 そして呼吸が荒くなり、野太い息遣いになる。 まさに獣。 この野性味あふれる荒っぽい前進は、 今までのレースでなったことのないモードだった。 世間で言われている「ゾーン」とは違う。 ゾーンではボールが止まってるように見えるらしい。 確かに周りのランナーの動きは遅く見えた。 しかしそれは周囲のランナーがへばってたからだ。 「遅く見えた」のではなく、「マジで遅かった」のだ。 ゾーンとは全然違う。 とは言うものの、自分の中で何かが覚醒し、 未体験の獣モードに入る。 これを「獣化」と名付けることにしよう。 富士山で「獣化」という禁じ手を ふいに発動してしまったのだ。 ペースを上げたせいか、空腹感を感じる。 エネルギーが足りない。 "食うものはねぇのか" ショッツがあと2個残ってるが、 それは5合目と8合目に残しておきたい。 なので、リストバンドに入れてる飴を取り出す。 しかし、個包装が張り付いて中身を取り出せない。 "あー、もうめんどくせぇ!" 包装から出しきってない飴をビニルごと口に放り込む。 そしてガリガリと噛んで食べ、 残ったビニルを吐き出して、ポケットに突っ込む。 それはおよそ人間のするべき食べ方ではない。 でも仕方ない。けものだもの。 " 1個じゃ足りねぇ" ってなことで、一気に3個の飴をガリガリと喰らう。 そして、塩熱サプリも5つ放り込んでバリバリと喰らう。 それはおよそランナーがとるべき補給法ではない。 でも仕方ない。けものだもの。 こういう浸透升も「ぐおお」と中央を突っ切る。 足には負担くるが、そのほうが速いし、抜きやすい。 それはおよそ完走を目指す人がとるべき進路ではない。 でも仕方ない。けものだもの。 動画撮影してる方がいる。大会オフィシャルだろうか? 「力士さん、がんばってー」 と声かけてもらった。 このまま野獣モードで突き進めば、 ひょっとすると5合目の関門に間に合うんじゃないか? あれ、五合目の関門って何分だっけ? 大会案内に、五合目の関門時刻が2時間20分から15分に短縮されると書いてあったのは覚えている。 しかしそれが来年以降の話だったのか思い出せない。 15分ならまずムリだが、20分なら微かに可能性はある。 どっちだ…? ・・まあ、どっちでもいいか。 行けばわかるさ。 そんなことを考える暇があったら、前へ進め! 前へ、前へ!! 道路に出た! 無論、舗装路も上り。 ふいに横から、 「すげー! 力士には負けられん!」 と声をかけられる。 5合目に間に合うかどうかわかってなかったので、 「そうっすよ。泣いても笑ってもあと数分、気合で!」 と返す。 再び森へ。シングルトラックで全く抜けない。 獣とほぼ年齢の変わらないランナーが、 「まだ間に合う! がんばろー!」 と周囲に声をかけてる。 「おぅ!」 と応えるつもりが、 「ワゥ!」 となってしまう。 それはおよそヒトが口にすべき言葉ではない。 でも仕方ない。けものだもの。 再び道路に出る。 応援の方が「あと3分!」と叫んでる 道路を横断。五合目コースは右に行くとゴール 五合目はまだか。 隣にいたオレンジビブスを着た救護の人に聞いてみると 「もうすぐだよ。そこそこ~」 と指差してる。すかさず腕時計を確認。 ・・間に合いそうだ! 馬返しに着くまでは五合目でリタイアして帰るつもりだったが、この区間で遅まきながらいつものレースモードに切り替わった。 というか、それを通り越して獣になった。 間に合うのならレースを続けるぞ。 8合目の関門突破は限りなく絶望的だけど、 体調が戻ったのなら、自分から投げ出すのはナシだ。 どんな結果が待ってても、力尽きるまで前進だ! 「 場所取るね、そのお腹! 」 と笑われつつ登っていくと、佐藤小屋が見えてくる。 5合目に着いた! 2時間18分29秒で通過。制限時間の1分半前。 5合目到着タイムは去年よりも遅いが、 馬返しから5合目の区間は、今年のほうが速い。 今年のほうが渋滞が長かったことを考慮すれば、 かなり頑張ったと言える。 獣化おそるべし! そして、地獄の後半戦に突入する。 |
by おすもーさん
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11月 2017
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