最終日はシンプルに山ひとつ。まず9km上る (4KVDA編を最初から読む方はこちら) 深夜1時にベースキャンプを出発。 今日の前半は、ひたすら上り。 ピークに何時頃に着くのか予想がつかない。 たぶん15時頃までに着けばゴールに間に合いそう。 ここまで来たら、さすがに完走したい。 もしピークに着くのが遅くなったら下りをぶっ飛ばそう 深夜だというのに、誘導スタッフが町中2ヶ所にいた。 もう通る人もまばらだというのに、ありがたいことだ。 実は前日の長い下りでポールのヒビが拡大してしまい、ポールの片方が15cmくらい短くなってしまっていた。 あと1日なので特に修理はせず。 最後まで折れませんように... 今のところ眠くない。 4時間寝ておきたかったが、3時間の睡眠なので 昨夜のように眠くなる可能性は高い。 眠くなり始めたら、先手先手で早めに対処するべく、 対策を脳内でシミュレーションしておく。 道中でアジア系の女性ランナーと前後する。 この方はたしか、男女ペアで走っていたはず。 男性はリタイアされたようだ。 どうやらこのレースはペアの片方がリタイアしても 残った選手はレースを続けていいようだ。 トレイルを抜けて次の町に着く。 さっき通過した町と街並みが全く一緒。デジャヴ! 深夜なのでもちろん町には誰もいない。 ドロップバッグに入れていたバッテリーがなくなり、ペツルが充電できなかったのでsprabeamで上る。 やはり少し暗い。 でも足元は安定しているので困ることもない。 ヘッドライトだけで光量が足りなかったら、 ハンドライトも使うことにする。 フラグが少ないが、コースはわかりやすい1本道なので 迷うことなく上っていく。 奥のベンチに姿勢正しく爆睡してる選手がいる 312km地点のエイド「Pontboset」に3:50到着。 ベースキャンプから約4時間かかったわりには、 それほど遠いとは思わなかった。 気の持ちようと、ラジオのおかげかな。 R101の「Silent Night」も今日で聞き納めだ。 ここは寝てる人がたくさんいるだろうと思っていた。 しかし予想に反して、ベンチで一人寝てるだけ。 みんな休まずに進んでるようだ。 すごいな… コーヒーがあったので、がぶがぶ5杯も飲む。 まだ眠くないけど、 カフェインを多く取っておくに越したことはない。 あと2時間半で夜を乗り切れる。 それまで眠くなりませんように... さらに9km上る トレイルを進み始めると、いきなり鼻血が出る。 これにはちょっと動揺した。 日中で暑いときなら、原因は「のぼせてる」からだ。 しかし今は寒い。 原因がわからず、「体が壊れてきたのか?」と思った。 鼻血を止めるにはしばらく安静にしてたほうがいいけど、立ち止まったら体が冷えてしまう。 そっちのほうが問題なので鼻にティッシュを詰めて進む 進んでいるのでしばらく血が止まらず、 喉の奥に垂れてくる血を飲み込み続けた。 鼻血の原因はたぶんコーヒーの飲み過ぎ。 興奮作用があるカフェインは鼻血の原因になるのだ。 しかしコーヒーの飲み過ぎが功を奏したのか、 最後の夜を眠くなることなく進むことに成功。 眠くなるか、鼻血を出すか、の2択だったら 後者のほうが全然マシなので、まあ結果オーライ。 6時半。もうすぐ夜が明ける! 街の明かりが見えてくる。夜を乗り切った! 大会の赤い横断幕を発見 321km地点のエイド「Chardonney」に7:15到着 パスタ入りスープにパンを浸して食べる。おかわりした このエイドは奥に寝れるスペースがあるみたい。 見に行かなかったけど、寝てる人、多そう。 スタッフに、トルデジアンに出たことのある 眼帯の日本人選手を知っているか聞かれる。 数年前、神流の前夜祭で見かけた人のことかな…? さらに5km上る 出発。ベランダに飾られてる花が綺麗! 橋を渡ったり、 オーソドックスな山道を上って、 見晴らしのいい平原に出る 牛のフンが落ちてるので踏まないように気をつける 夜に通ったら靴がフンまみれになったに違いない... フンの犯人たちを横目に進んでいくと、 道をふさいでおる... 左側から抜こうとしたら、いきなり振り向いてくる。 頭突きされたら、左の谷に落ちてしまうので 刺激しないように、そーっと横を通過。 これはもう抜くスペースがない。牛のペースで進もう.. 牛さん達とお別れして、見晴らしのいい丘を進む 写真中央に小さく写っているのは馬。凛々しい立ち姿! 327kmのエイド「Rifugio Dondena」に9:50到着 ポモドーロパスタを食べる。感じのいいご主人だったな フォトタイムを終えて、出発 さらに4km上る さて、行きますか 子ヤギが木の芽を食べてて可愛かったんだけど、 アングルが上でほとんど写ってない... 天気もいいし、景色もいいので、 ルンルン進んでいく 330km地点のエイド「Rifugio Miserin」に11:20到着 わんこが、ぐでっと寝ていた。 子供の頃、近所にいた「ムク」に似てる。かわいい! なんでこんなところで寝てるんだろ。 日陰で寝たかったのか…? コーラを2杯飲む。 さっきパスタを食べたばかりなので、食事はせず。 エイド出発時に、女将さん&ムクと写真を撮った。 4km。ついに峠を越える! さあ行こう。峠まであと少しだ 日なたぼっこ中 遠くに小さく見える鉄塔がピークだと教えてもらう 最後は急登に。あとひと踏ん張り! ピークだ! 標高2827mの「Col Fenetre de Champorcher」に到着 深夜に出発してから11時間かけて上りきった! 時間だけ見ると、ずいぶん上ってきた感じがするけど、 気づいたらピークに着いたという感じ。 出発前に想像していたよりも、だいぶ楽だった。 うしろを振り返る 「このままトルデジアンもどうだい?」 ピークにいたカメラマンに言われた。 実際、4Kのあとにトルデジアンを走る選手が 数人いるみたい。タフ過ぎる! 上りきった! (Photo courtesy of 4KVDA / Spataro Marco) 仰ぎ見た空 さて、下りますか いい眺めだなー ぐんぐん下っていくと、 左側に小屋が見えてくる 12時半に334km地点の「Rifugio Sogno」に到着 「あとで写真いいかい? テレビで君を見てから ここにやって来るのをずっと待ってたんだ」 小屋の入口でご主人から話しかけられる。 これまで、いつにも増して応援してもらえたのは テレビに出てたからだとここで気づく。 テレビの影響ってすごいね! スープとクラッカーを食べる。 最後のエイドなので、前祝いでビールを飲むことに。 このレースで初めてお金を使う。 ビールは「大」と「小」があるそう。 「大」にしようかなと思ったけど、 ピッチャーみたいな特大サイズかもしれない。 そしてスタッフからコールがかかり、勢いに任せて飲んだら酔いつぶれ、そのまま目覚めることなくリタイア。そして伝説へ... となってしまうかもしれない。 それはちょっとマズイので、「小」にする。 「俺も日本語を勉強するから君もイタリア語を勉強してよ。君といろいろ話してみたかった」 ご主人から言われて、そうだなーと思った。 また来ることがあれば、 簡単な文章は話せるようになっておきたい。 レース中にも話したそうにしている人をよく見かけた。 残念ながら、イタリア語もフランス語も話せないので 簡単な挨拶程度になってしまうことがよくあった。 Googleが本気出して、「翻訳コンニャク」みたいなのを 早く開発してくれないだろうか... 15km下ってゴールへ さあ、最後の区間だ ここでDさんに追いつく。 同じようにケガをしていて走れない海外選手と 一緒に進んでいた。 昨日の長い下りを含め、膝を痛めた状態でここまでリタイアせずに進み続けているのは改めてすごいと思った。 メンタル強すぎ! 私だったら、あっさりリタイアしているに違いない。 20分くらい並走したあと、先に進む。 実はこの時、16時までにゴールしたいと思っていた。 私の宿はゴール地点から遠いので、タクシーが必要。 でも1日4本だけコミュニティバスが走っていて、 最終便が16:30にあるという情報を入手していた。 バスは無料。 節約のためにも乗りたい! そんな考えが頭にあったため、 最後の長い下りもダレることなく走って下っていく。 ゆるやかな土のトレイルで走りやすかった。 ご褒美区間! この素晴らしい景色も今日で見納め 1週間の旅を振り返る。 初日は荷物が重すぎて、しんどかったし、 時々現れる急登もキツかったけど、 大きなケガもなく、ほとんど眠くなることもなく、 景色も食事も良い上に、たくさん応援してもらって、 ホントに楽しい一週間だった! その旅ももう終わる。ちょっと寂しいぞ... そしてついに... コーニュの街が見えてくる。帰ってきた! トレイルが終わってロードに出る お店から出てきて声かけてくれた あと6kmと言われる。まだけっこうありますな... ひたすら川沿いの林道を早歩き 「お帰り!」 向かいから女性が走ってきてハグされる。 選手はGPSを持ってるので、WEBで位置を確認できる。 この一本道で、力士の帰りを待っている方が数人いた。 意味不明な見知らぬ海外選手を待っててくれるとは! 一緒に写真を撮ったり、英語が話せる人とは談笑した。 マウンテンバイクに乗った青年が向かいからやってくる 最初はただの通りすがりかと思ったが、 ゴールまで案内してくれる誘導係だった。 スパルタスロンと同じ方式だ。 この青年は、この町に住んでる人だった。 相変わらず肉が食べたかったので、近くに美味しいステーキハウスはないか聞いてみたら、町に入る手前の右側にある店を勧められた。 街に入る 「Bravo!」の嵐。うれしい! マウンテンバイクに乗ってる右の青年が誘導してくれた おじさんが走って回り込んで撮ろうとしてたので 立ち止まってポーズをとる 右にゴールゲートが見えるが奥のホテルまで進んでいく 車からクラクション鳴らされたり、車内から声をかけられたりしながら、ホテルの角を右折。 するとそのホテルから女性が出てきて声をかけられる。 「ずっと、あなたのことをWEBでチェックしてたのよ。 TwitterとFacebookもフォローしたの!」 仮装して350km走っただけで、 こんなに人を感動させるものなのだろうか。 ・・と、こちらが恐縮してしまうくらい、 感極まった表情をされていた。 まあTwitterはやってないので、 フォローしてもらったのは同姓同名の別人だけど... ホテルを曲がると、誘導してくれたバイクの兄ちゃんが 「あとはそこを曲がるだけだから。 君のゴールシーンを見たいから、行くね!」 と言って、バーっとゴールの方へ行ってしまった。 ゴールシーンは、しっかり記録に残しておきたいので そこからGoproを撮りっぱなしにした。 ・・んだけど、Goproの電池が残っていなくて、 なんと数秒しか撮れてなかった。 350km走った感動のゴールシーンなのに! ありえない!!! それはともかく最後の直線に入る。 右側の人達とゆっくりハイタッチしながら ゴールゲートに近づいていく。 そしてゲート真横までハイタッチし続け、 横からステージに飛び乗る。 ゴール! (Photo courtesy of 4KVDA) 151時間の旅が終わった! ゴールの関門が4時間伸びたことをあとで知ったけど、 そうでなければ制限時間4時間前のゴール。 セーフティリードを保ち、 なおかつ緊張感も保てる理想的な制限時間だった。 最後まで耐えてくれたポールを見つめる (Photo courtesy of 4KVDA) ゴールしてまず頭に浮かんだのは、ポールへの感謝。 2日目に故障してから簡単な修理だけでここまで来た。 ヒビが大きくなり、長さの違う状態になってしまったけど、折れることなくなんとか最後までもってくれた。 コイツがなければ350kmを完走することはできなかった 2012年のおんたけ100kmで使い始めて以来、 4年間、いろんな山をコイツと上ってきた。 脚力のない私は上りも下りもハードにポールを使う。 そのツケがこのレースで出たのだと思う。 コイツと走るのも、このレースが最後だろう。 今までありがとう。 インタビューを受ける (Photo courtesy of 4KVDA) びっくりするくらい、たくさんの観客がいた。 すげーなー、こりゃ! こんなに観客が待っていてくれてたとは... 仮装してよかった! インタビュー終了後、スタッフに誘導され、 「この方と写真を撮って下さい」 と言われ、美人さん2組と写真を撮る。役得! その後、レース中に何度もすれ違った、 中国のカメラマンとハイタッチ。 そしてCさんが声をかけてくれた。 ゴール後で眠いはずなのに来ていたのだ。 (> Cさん、Thanks ! ) FINISHERボードの前で記念撮影をして、 赤い大きな大会ボードにサインをする。 お相撲さんの絵を書きたかったんだけど、 妖怪みたいな絵になってしまった。絵心が... そのあとは、しばらくフォトタイムが続いた。 美女にスパークリングワインを注いでもらって、 ソファに座って、周囲の人と乾杯! 別のインタビューを受けたあと、
スパークリングワインを飲みほして、そそくさと退散。 余裕はないけど、まだバスに間に合うかもしれない。 仮装のままテントを出て、受付会場へ走って移動。 およそ350kmを走った後とは思えない。 受付会場に入ると、既にゴールしてくつろいでいた選手達がお相撲さんに気づいて拍手してくれた。 何度もすれ違った選手達から祝福されるのは嬉しい! GPSを返却して、デポジットの100ユーロをもらう。 アイゼンとドロップバッグは、そのままもらえた。 そしてバスの乗り場を聞く。 このとき16:25。残りあと5分! するとブロンドヘアの女子が現れる。 英語が早くて理解しづらかったが、どうやら彼女の車で宿まで送ってくれるようだ。ホントに!? 他の方と一緒に送ってくれるみたいなので、 しばらく待つ。 すると日本の選手がやってくる。 レースでは、ほとんどすれ違うことのなかった方。 3日目のエイドで会ったくらいかな? 車内で夜に日本選手の夕食会があることを教えてもらったけど、また町までタクシーで往復する気にはなれず断念... ホテルに着くと、ご主人が外に出てきてくれた。 写真を撮られる。 自分の宿に泊まった客が 仮装して走ってるのを知ってたようだった。 部屋に着いて、まずシャワーを浴びる。 シャワーは2日目夜に浴びて以来。やっと洗える! 5日間、貼りっぱなしだったテーピングをはがすと、 跡がすごくついていた。 初日に痛めた右足首を回してみると、痛くない。 ずっと固定しているうちに治ったようだ。 シャワーのあとは、やっぱりビールが飲みたい。 宿の近くにお店があるのを思い出して行ってみる。 しかし営業時間17時までだった... 宿に戻り、ご主人に聞いてみると、 宿でビールと炭酸水を売ってくれた。 ベッドに寝っ転がって、ビールを飲みながら 1週間ぶりにスマホをチェック。 レース中はネット断捨離してたので、なんか新鮮。 LINEを返信していると、いつの間にか寝てしまった。 |
by おすもーさん
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